日程の問題は、暗記ではなく手順どおりに数字を埋めれば必ず解けるタイプです。前から足していく前進計算(最早)→後ろから引いていく後退計算(最遅)の2往復で、各作業の余裕(フロート)が出ます。余裕ゼロの経路がクリティカルパス。そして進捗とコストを同じ物差し(金額)で測るのがEVMです。この2つは出題の常連で、しかも計算の型が決まっているので、型を持っているかどうかで差がつきます。
日程計算は「1つの作業は、先行作業が全部終わらないと始められない」という1本のルールだけで動きます。前進計算は先行作業の最早終了のうち最大を取り、後退計算は後続作業の最遅開始のうち最小を取る。「行きは最大、帰りは最小」——ここを取り違えなければ、あとは算数です。
アローダイアグラム ― 依存関係を図にする
まず本文の「Bの後にDを行う」「DとEが終わってからF」といった記述を、そのまま矢印の図に写します。ここでは次の6作業を例にします(日数は作業期間)。
| 作業 | A | B | C | D | E | F |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 所要日数 | 3 | 4 | 2 | 5 | 3 | 2 |
| 先行作業 | ― | A | A | B | C | D・E |
Aの後がBとCに分かれ、B→D と C→E の2本の流れが、最後のFで合流する形です。図にすると分岐と合流が一目で分かります。
経路は2本。A→B→D→F = 3+4+5+2 = 14日、A→C→E→F = 3+2+3+2 = 10日。全体の工期は長いほうの14日です(短いほうが終わってもFは始められないため)。
前進計算(最早開始・最早終了)
先頭を0日目として、最早開始(ES)+所要日数=最早終了(EF)を前から順に埋めます。合流点(ここではF)では、先行作業のEFのうち最大を取るのがポイントです。
| 作業 | 先行 | 所要 | 最早開始 ES | 最早終了 EF | 埋め方 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | ― | 3 | 0 | 3 | 開始点なので0+3 |
| B | A | 4 | 3 | 7 | AのEF=3から |
| C | A | 2 | 3 | 5 | AのEF=3から |
| D | B | 5 | 7 | 12 | BのEF=7から |
| E | C | 3 | 5 | 8 | CのEF=5から |
| F | D・E | 2 | 12 | 14 | max(12, 8)=12(遅いほうを待つ) |
FのEF=14。これがプロジェクトの最短完了日=14日です。
合流点で平均や小さいほうを取ってしまうのが典型的なミスです。合流する作業は「先行が全部終わってから」始まるので、必ず最も遅いEFに合わせます。分岐(Aの後のB・C)は逆に、どちらも同じESから始められます。
後退計算(最遅終了・最遅開始)
次は完了日14を出発点に、後ろから引きます。最遅終了(LF)−所要日数=最遅開始(LS)。分岐点(ここではA)では、後続作業のLSのうち最小を取ります。
| 作業 | 後続 | 所要 | 最遅終了 LF | 最遅開始 LS | 埋め方 |
|---|---|---|---|---|---|
| F | ― | 2 | 14 | 12 | 完了日14から14−2 |
| D | F | 5 | 12 | 7 | FのLS=12まで |
| E | F | 3 | 12 | 9 | FのLS=12まで |
| B | D | 4 | 7 | 3 | DのLS=7まで |
| C | E | 2 | 9 | 7 | EのLS=9まで |
| A | B・C | 3 | 3 | 0 | min(3, 7)=3(早いほうに合わせる) |
この2往復を図に書き戻すと、各作業の上に「最早」下に「最遅」が並びます。
緑=最早(ES/EF)紫=最遅(LS/LF)赤枠=余裕ゼロ
クリティカルパスとフロート(余裕)
トータルフロート = LS − ES = LF − EF。この値が0の作業を結んだ経路がクリティカルパスで、それは同時に最長経路でもあります。
| 作業 | ES | LS | トータルフロート | 意味 |
|---|---|---|---|---|
| A | 0 | 0 | 0 | 1日でも遅れると全体が遅れる |
| B | 3 | 3 | 0 | 同上 |
| C | 3 | 7 | 4 | 4日までの遅れなら全体に影響しない |
| D | 7 | 7 | 0 | 同上 |
| E | 5 | 9 | 4 | 4日の余裕がある |
| F | 12 | 12 | 0 | 同上 |
よってクリティカルパスは A→B→D→F(14日)。C・Eの側には4日の余裕があります。余裕を帯で描くと違いが見えます。
Dは余裕なし=遅れがそのまま全体の遅れ。Eは4日ぶんの余裕(トータルフロート)を持つので、多少ずれても完了日は動きません。
「工期を縮めたい」と問われたら、手を入れるのはクリティカルパス上の作業だけです。余裕のあるC・Eをいくら短縮しても全体は1日も縮みません。逆に、短縮を進めると別の経路が新しいクリティカルパスに変わる点にも注意(この例ではA→B→D→Fを4日縮めると10日になり、もう一方の経路と並んで両方がクリティカルになります)。短縮は「今のクリティカルパスの長さが、次に長い経路に追いつくまで」が効く範囲です。
フロートには2種類あります。トータルフロート=全体の完了を遅らせずに持てる余裕。フリーフロート=後続作業の最早開始を遅らせずに持てる余裕(=後続のES −自作業のEF)。例のEはフリーフロートも4日ですが、Cは後続Eの最早開始5に対しEF=5なのでフリーフロートは0。「全体には余裕があるが、後続を動かさずに使える余裕はない」という状態です。単に「余裕」と書かれたらまずトータルフロートを疑います。
工期短縮 ― クラッシングとファストトラッキング
遅れを取り戻す手段は大きく2つ。どちらも代償があるので、本文が気にしている代償(コストか、手戻りか)で選び分けます。
クラッシング(資源投入)
- やり方:要員や設備を追加して、その作業自体の期間を縮める。
- 代償:コスト増。要員追加は教育・調整の手間も増える(人を倍にしても期間は半分にならない)。
- 向く場面:予算に余裕があり、作業の順序は変えたくないとき。
- 選び方:クリティカルパス上で1日短縮あたりの追加コストが安い作業から。
ファストトラッキング(並行実施)
- やり方:本来直列だった作業を一部重ねて並行に進める。
- 代償:手戻りリスク。前工程が固まる前に後工程を始めるため、前提が変わるとやり直しになる。
- 向く場面:追加費用をかけられない/要員を増やせないとき。
- 選び方:前工程の変更が起きにくい部分から重ねる。
設問は「費用を増やさずに短縮したい」「品質・手戻りは避けたい」といった制約を必ずどこかに書いています。制約がコストならファストトラッキング、制約が手戻り・リスクならクラッシング——と本文の制約から逆に決めるのが確実です。用語の暗記ではなく、代償の対応づけで選びます。
EVM ― 進捗とコストを1つの物差しで測る
「予定より遅れているのか」「お金を使いすぎているのか」を同じ単位(金額)で見るのがEVMです。登場するのは3つの値だけ。
PV(計画価値)
- その時点までに終わっている予定だった作業の、計画上の金額。
- =計画の物差し。
EV(出来高)
- 実際に完了した作業を、計画上の金額で数えた値。
- =実績の「量」。EVMの主役。
AC(実コスト)
- その作業に実際にかかった金額。
- =実績の「支出」。
EVだけが「やった量」を計画の値段で測った値です。だからEVをPVと比べれば進捗(日程)、ACと比べればコスト効率が分かる。1つの値を2方向に比べるだけ、というのがEVMの全体像です。
総予算BAC=1,000万円・全10か月の計画で、5か月経過時点を見ます。累積の3本を並べると次のようになります。
PV 計画EV 出来高AC 実コスト
3本が開いていく形=EVが一番低く、ACはEVより上。これは「予定より進んでいないのに、お金は多く使っている」典型の姿です。
PV=500万 EV=400万 AC=450万(BAC=1,000万)SPI = EV ÷ PV = 400 ÷ 500 = 0.8 → 予定の8割しか進んでいない(遅れ)
CPI = EV ÷ AC = 400 ÷ 450 = 約0.89 → 1円あたり0.89円ぶんの成果(コスト超過)
EAC = BAC ÷ CPI = 1,000 ÷ 0.89 = 約1,125万円 → この効率のままなら最終的に約125万円の超過
(差で見るなら SV=EV−PV=−100万、CV=EV−AC=−50万。マイナス=遅れ/超過)
| 指標 | 式 | 1未満なら | 1超なら |
|---|---|---|---|
| SPI(日程効率) | EV ÷ PV | 計画より遅れている | 計画より進んでいる |
| CPI(コスト効率) | EV ÷ AC | 予算を使いすぎている | 予算より安くできている |
| EAC(完成時総コスト予測) | BAC ÷ CPI | CPI<1 なら EAC>BAC=最終的に予算超過/CPI>1 なら予算内で収まる見込み | |
残作業の見積りETC=EAC−AC(例では1,125−450=675万円)。「あといくら要るか」を聞かれたらこちらです。
試験で差がつく急所
どちらも分子はEVで、違うのは分母だけ。日程を見たいならPV(計画)で割る=SPI、コストを見たいならAC(実支出)で割る=CPI。覚え方は「S(Schedule)はPlanと比べる、C(Cost)はActual costと比べる」。数値だけ与えられて「遅れているか」「予算超過か」を判定させる設問では、割る相手を間違えた瞬間に結論が逆になります。EACをBAC÷SPIとしてしまうのも同じ取り違えです(EACはコストの話なのでCPI)。
コンティンジェンシ予備=特定済みのリスクに備える予備。ベースライン(コスト/スケジュールの基準線)の中に含まれ、管理者(プロジェクトマネージャ)の判断で使える。
マネジメント予備=未知のリスク・想定外に備える予備。ベースラインの外(総予算には含むが基準線には入れない)に置き、使うには上位(責任者・スポンサー)の承認が要る。
ここを混ぜると、「その支出はベースラインに影響するか」「誰の承認が必要か」を問う設問で外します。既知=内側・自分で使える/未知=外側・承認が要ると対で覚えます。
SPIが1でも安心はできません。SPIは金額の比なので、余裕のある作業が進んで、クリティカルパス上の作業が遅れている場合でも1に近く出ることがあります。EVMの数値はクリティカルパスの状態と合わせて読む——この組合せが問われる典型パターンです。