従来の守りは境界を作る発想でした。内と外を分け、外からの侵入を防ぎ、中に入れた相手は信用する。ゼロトラストは、この「中なら信用する」をやめる考え方です。装置を買えば実現するものではなく、前提の入れ替えだという点が要点になります。
境界が成り立たなくなった理由は2つ。業務のデータが社外のサービスに移ったこと、働く場所が社外に広がったこと。守るべきものも人も境界の外に出たので、「線の内側だから安全」という前提が実態と合わなくなりました。加えて、内部に侵入された時点で自由に動かれてしまうという弱点も、以前から指摘されていました。
何を毎回確かめるのか
判断は接続時の1回だけではありません。状態が変われば(端末の修正が外れた、普段と違う挙動が出た)その場で権限を絞るのが本来の姿です。だから記録と監視が土台になります。
「ゼロトラストにすれば境界の守りは要らない」は誤りです。侵入を防ぐ仕組みは引き続き必要で、変わったのは「入られた後も自由に動けないようにする」という重心です。もう1つ、権限を細かく分けるほど運用は重くなります。何もかも最小権限にすると業務が止まるので、資源の重要度に応じて厳しさを変えるのが現実解です。
境界防御との比較
境界で守る
- 判断の材料:どこから来たか(社内か社外か)
- 強い場面:出入口が限られている構成
- 弱点:中に入られると横に広がられる
毎回確かめる
- 判断の材料:誰が・どの端末で・何に
- 強い場面:社外の利用と社外のサービスが多い構成
- 弱点:認証と権限の管理が一点に集まる。運用が重い
設問はテレワークや社外サービスの利用とセットで出ます。答案では「社内かどうかではなく、利用者と端末の状態で判断する」という言い方が芯です。加えて被害の広がりを抑える観点——区画を分ける、権限を必要な範囲に絞る、記録して異常に気づく——を添えると、「侵入前提の設計」という趣旨に合った解答になります。
段階的にしか進まない
一度に全部は置き換えられません。現実には社外から使う入口や重要な資源から順に、認証を強くし、端末の状態を見て、記録を集める、という順で進みます。設問でも「どこから着手するか」が問われることがあり、影響の大きい所・外に開いている所からと答えるのが筋です。