無線LANが有線と決定的に違うのは2点です。電波は共有資源で、同じ電波の帯を使う端末が順番待ちで分け合うこと。そしてケーブルを挿さなくても届いてしまうこと。速度の設問も、セキュリティの設問も、この2つから出てきます。
親機(アクセスポイント)は特定の周波数の区画(チャネル)を使って通信します。同じチャネルを使う端末は同時に喋れないので、順番に送ります。したがって接続台数が増えるほど、1台あたりの取り分は減ります。「親機を増やせば速くなる」は、チャネルを分けられている場合に限って正しい話です。
台数を増やしても速くならない理由
だから設計では、隣り合う親機に重ならないチャネルを割り当てます。使える区画の数は限られているので、電波の届く範囲を絞って(出力を下げて)、同じチャネルを離れた場所で使い回すのが基本の考え方です。「出力は強いほどよい」ではない点が、直感と逆になります。
速度の表記は理論上の最大値で、しかもその親機に繋がる全員の合計です。実効はそこから、順番待ち・電波の弱い端末・再送によって下がります。さらに遅い端末が1台混ざると、その端末の通信に時間がかかる分だけ全体の順番が詰まります。「規格上は速いのに遅い」の答えは、たいていここにあります。
守りは「暗号方式」の前に「誰を入れるか」
効く
- 端末ごとに資格情報を分ける(利用者や機器で認証し、退職・紛失時にその1台だけ止められる)
- 接続先を業務用と来客用で分ける(同じ電波に見えても、内部網に入れない)
- 強度の高い暗号方式を使い、古い方式を無効にする
頼りにならない
- 共通の合言葉だけ:1人漏らせば全員分が漏れ、変更は全端末の再設定になる
- ネットワーク名を隠す:接続時のやり取りから分かるので、目隠しにしかならない
- 機器のアドレスで許可:正規の値を観測して名乗れる
設問はよく「持ち出した端末・退職者・来客」を出してきます。ここで共通の合言葉だと、その1人のためだけに止められないという不都合が刺さります。答案の芯は「利用者ごとに資格情報を分け、失効させられる状態にする」。加えて、電波は建物の外へ漏れる前提で、入られても内部に届かない区画分けまで書けると強くなります。
偽の親機という手口
攻撃側は同じネットワーク名の親機を用意して、端末を誘い込むことができます。端末から見ると見た目は同じなので、接続先が本物かを確かめる仕組み(接続時に相手側も証明する方式)が要ります。ここはTLSの傍受と同じ構図で、「暗号化されているか」ではなく「誰と繋がっているか」が急所です。
つながる仕組み
この仕組みを使う設問
- H29秋 NW 午後Ⅱ 問2無線LAN(IEEE802.11ac)の導入
- R05春 NW 午後Ⅰ 問3高速無線LAN(Wi-Fi 6)の導入と新校舎ビルLAN設計
- H30秋 SC 午後Ⅰ 問2ワームV感染インシデント対応
- H31春 SC 午後Ⅰ 問2クラウドサービスの認証方式強化
- H31春 SC 午後Ⅱ 問1マルウェア感染と対策
- R02秋 SC 午後Ⅰ 問1スマホ決済「Nシステム」のセキュリティ設計
- R05秋 SC 午後 問2セキュリティ対策の見直し
- H31春 AP 午後 問5ネットワーク
- R03秋 AP 午後 問5ネットワーク
- H29秋 SA 午後Ⅰ 問4スマート農業の農業生産システム(IoT・AI)