論述式には公式の模範解答がありません。採点者が見るのは「正解との一致」ではなく、能力と経験が伝わるかです。だからこそ"型"を知っているかで差がつきます。
このページは、SA・STの午後Ⅱ論述(平成26年度〜令和7年度)・SM(平成29年度〜令和7年度)・PM(平成30年度〜令和7年度)を実際に通しで解いて見えた構造を、そのまま攻略法としてまとめたものです。
① 骨子は毎年ア→イ→ウの3部で不変
設問は毎年ア・イ・ウの3問。役割と字数が固定で、同じ題材で一貫させるほど高評価です(題材のすり替えは致命的)。SA・ST・SM・PMのいずれも共通です。
概要・背景。事例の器をつくる。ここは簡潔に。
中核の設計・企画・工夫。配点の山。字数はここに寄せる。
評価・課題・例外・改善。差がつく所。イと重複させない。
② 問題スロットが毎年固定
どの問題を選んでも、問番号ごとにテーマの"枠"が決まっています。まず自分の得意な枠を決められます。
| 区分 | 問1 | 問2 | 問3 |
|---|---|---|---|
| SA | 情報システム設計系 業務プロセス見直し/方式設計/要件定義/移行 | 情報システム機能系 データ交換/機能変更・追加/PoC | 組込みシステム専用 アーキ設計/機能分割/OSS/自動化 |
| ST | 事業・新サービス系 IT新事業/DX/ビッグデータ/グローバル | IT企画・戦略系 IT戦略/ビジネスモデル/業務分析で真因/構想 | 組込みシステム専用 製品企画/非機能要件/IoT/異業種協業 |
| SM | 顧客・サービス設計系 顧客満足/SLA合意/事業関係管理/サービス継続/変更管理 | 運用現場の改善系 継続的改善/インシデント・障害管理/リリース及び展開/運用品質 | ―(SMは問1・問2の2問構成) 組込み枠は元から無し |
| PM | 問番号ごとの固定枠はなし(PM だけ問1・問2にテーマの枠が決まっていません) ただし「管理プロセス系(コスト/スケジュール/リスク/変更/修整)」と「人・ステークホルダ系(対立/コミュニケーション/リーダーシップ/育成)」が1年に1問ずつ出る年が多い(平成30年度〜令和7年度の8回中6回)。例外は令和2年度・令和5年度で、2問とも管理プロセス系でした | ―(PMも問1・問2の2問構成) 組込み枠は元から無し | |
※ 問3は SA・ST では毎年「組込みシステム専用枠」。平成26〜令和5年の全年で一致しました。SM は収録した全年(平成29年度〜令和7年度)で問1・問2の2問(1問選択)で、問3はありません。PM も収録した全年(平成30年度〜令和7年度)で2問(1問選択)です。
③ 区分で「得点軸」が決定的に違う
同じ「問1・ア/イ/ウ」でも、SA・ST・SMでは評価される中身が別物です。ここを取り違えると刺さりません。
SA=技術設計の妥当性と実務経験
- 設問イ:設計を具体的に(データ・機能・アーキ・移行方式)。
- 設問ウ:正常系(イ)と重複しない課題・例外・移行・トレードオフ。
- 問3(組込み):機能分割・リアルタイム/リソース制約・安全性=技術的最適化。
ST=事業インパクトと投資判断
- 設問イ:費用対効果を数字で(投資額と効果の対・複数案の比較でROI)。
- 設問ウ:経営者・事業部門の評価(どの数字を見て何を承認したか)。
- 問3(組込み):製品戦略・事業性(誰に何の価値を売り収益化するか)。
SM=運用の管理設計と継続的改善
- 設問ア:冒頭の記入フォームで対象ITサービスと自分の立場を宣言してから背景へ。
- 設問イ:担当プロセス(変更/インシデント・問題/可用性/サービス継続/SLA運用)で、実施した施策・手順・体制を数値目標つきで。
- 設問ウ:指標で測って評価(SLA達成率・稼働率・MTTR・再発率など)し、残る課題と次の改善(CSI)へ。
PM=制約下の意思決定と合意形成
- 設問ア:冒頭の記入フォームで対象プロジェクトと自分の立場を宣言。特徴・目標に加え、その年の主題(兆候・リスク・不確かさなど)までアで置ききる。
- 設問イ:作った物ではなく判断。制約を立てて採らなかった案と却下理由を書き、誰にどの場で説明して承認を得たかまで書く。
- 設問ウ:実施状況・評価・改善点。要求要素を数えて章立ての数を合わせる(例:2つの策×3要素=6マス)。
④ 覚えるのは「3層のコツ」
- 毎年共通の型:自分の事例で書く/ア→イ→ウを同じ題材で一貫/イが配点の山/ウで差/設問要求を分解して段落数を合わせる/固有名詞で具体化。(SA・ST・SM・PM 全区分・全年で不変)
- 区分・スロット固有の得点軸:上の③。(区分ごとに毎年安定)
- 問題固有の勘所:その年その問題ならではの罠。(1問ずつ実際に解かないと出てこない ↓)
⑤ 実際に解いて拾った「勘所」の例
- SA H26 問1問題文が「原因×活用×例外対応」の対応表を先に提示。自分の事例をその1行に当てはめれば骨子が立つ。
- SA 共通設問イとウの重複が最大の失点源。イ=正常系(本線)/ウ=異常系(それでも回す仕掛け)で割り切る。
- SA H27 問1設問ウを「技術評価」と取り違えやすいが、実は利用者への説明の工夫(=伝え方の設計)。
- SA H28 問3OSS組込みではライセンス(コピーレフト=GPL汚染)を、独自ロジックとどう機能分割で切るかが勘所。
- ST H27 問2「"緊急"だからすぐ最優先」と書くと浅くなる。全体最適の順序づけ(共通基盤の先行整備)が核。
- ST R01 問1・問3ウの相手が経営者でなく事業部門(説明→指摘→改善の双方向)/外部調達は"何を渡さないか"の設計が得点源。
- ST R03 問3異業種協業では、課題を自社視点でなく協業各社それぞれの立場で複数出し、分担のトレードオフを1点深掘り。
- SM R06春 問1変更管理は「承認を速くする」だけでは減点。必要な統制を残したまま承認遅延を解く(標準変更の拡大とCAB運営の見直し)のが核。
- SM R05春 問1SLAは「結んだ」で終わらせない。顧客と討議になった項目を軸に、合意の経緯とSLAを見直す仕組みまで運用者として設計する。
- SM R06春 問2ヒューマンエラー障害は直接原因で止めず、根本原因→再発防止、さらに個別事象→組織の傾向・組織課題へ視座を上げる。
- SM R07春 問2外部クラウド活用では、直接動かせない供給者を前提に、管理プロセスとOLAで自組織のサービス目標を守る組み直しを書く。
- PM R03秋 問2スケジュールは「原因への対応策」と「遅れのばん回策」を言葉で分ける。要員追加はどちらにもなり得るので、何を狙った策かを明示する。
- PM R06秋 問1「不確かさ」は問題文の定義=正確な予測を妨げる要因。要員離脱や障害といった一般のリスクを書くと、以降の予測活動・再見積りが全部空回りする。
- PM R04秋 問2設問ウが設問イではなく設問アを受ける回。イ(計画段階)とウ(実行段階)は並列で、ウをイの結果報告にすると題意を外す。
- PM R07秋 問1育成計画は技術的側面ではなく人間的側面。スキルマップや研修計画を書くと外す。さらに人事・上司の施策ではなくPM権限でできる範囲に収める。
⑥ よくある失点パターン
- 「一般に〜とは」で始める=一般論。最も評価されない。
- 設問ア(背景)に字数を使いすぎてイが薄い。字数はイに寄せる。
- 設問イとウで同じことを2回書く(正常系/異常系の切り分けができていない)。
- 費用対効果(ST)を言葉だけで済ませ、投資額と効果を数字の対で書けていない。
- 施策を書いて終わり(SM)。指標での評価と次の改善(CSI)までウで繋げていない。
- SMで管理者ではなく設計者・企画者の視点になる(内部設計やROIに寄り、運用の当事者として何を管理したかが見えない)。
- PMで「何をしたか」だけ書き、なぜそう判断したかの根拠が無い(数値を並べただけでは根拠にならない)。
- PMで設問の要求要素を数えずに書き始める(「AとBとCについて」の1つが丸ごと落ちる=片側落ち)。
- PMで計画段階と実行段階/予見と実際を混ぜる。設問間で同じ話を2回書くことになり、片方が空になる。
- PMで関係者の合意・承認を書かない。ベースライン変更もコスト増も、誰にどの場で承認を得たかが要る。
- PMでその年の限定条件(チーム内/チーム外部/計画変更の要求元/プロジェクト外部の変化)を外す。
⑦ 論述本の一覧(全94冊)
このページで説明した型を、1問ずつ実際に解いて解説にしたものです。区分名をクリックすると開きます。
SA(システムアーキテクト)の論述本 31冊 平成26年度 秋期〜令和7年度 春期
ST(ITストラテジスト)の論述本 31冊 平成26年度 秋期〜令和7年度 春期
SM(ITサービスマネージャ)の論述本 16冊 平成29年度 秋期〜令和7年度 春期
PM(プロジェクトマネージャ)の論述本 16冊 平成30年度 春期〜令和7年度 秋期
分析対象:SA 平成26年度〜令和7年度/ST 平成26年度〜令和7年度/SM 平成29年度〜令和7年度/PM 平成30年度〜令和7年度の午後Ⅱ論述。各年の解説ブックは下の一覧、またはトップから読めます。